結局、プラスチック新法ってこれまでと何が違うの?【ミライさんと学ぶサス超入門】

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登場人物
●ミライさん:サステナビリティに興味はあるけど、ド・初心者。最近、環境に配慮した食事方法を少しずつ実践中。
●ハトリさん:生粋のサスっ子。新卒でPwCサステナビリティ、TBMへと転職、サステナビリティ部 責任者。趣味は銭湯巡りとトレイルランニング。

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ハトリ:ミライさん、ちゃんとごみの分別してますか。

ミライ:やってますよ。燃えるごみ、燃えないごみ、プラごみに、紙や金属、ビン・缶とPETボトルなどの資源ごみ……ちゃんと収集日に出してます。

ハトリ:最近は「燃えるごみ」「燃えないごみ」じゃなくて「燃やすごみ」と「燃やさないごみ」という自治体のほうが多いですけどね。紙もPETボトルも燃えるけど、資源物として燃やさずにリサイクルするので。

ミライ:プラごみもそうですよね。リサイクルしやすいように、コンビニのお弁当のトレーもさっと水で洗ってから出してます。

ハトリ:ああ、どうせほとんど燃やされていますけどね。

ミライ:うそ!リサイクルのために分別しているんでしょ。

ハトリ:プラごみの62%はサーマルリサイクルといって、燃やして「熱エネルギー」として回収・利用するリサイクル方法が採られているんですよ。燃やしたときに生じた熱は火力発電や温水プールに使われたり、水分の多い生ごみを燃やすための“燃料”代わりに使うこともあります。あと、8%は単純に焼却されているので、合わせてプラごみの70%は燃やされていることになりますね。

ミライ:てっきり、またプラスチックに生まれ変わっているものだと思ってました。

ハトリ:プラスチックから再びプラスチックを作るのをマテリアルリサイクルと言いますが、すべてのプラごみのうちの21%です。その他、プラを化学的に処理して、他の化学物質に換えるケミカルリサイクルという手法もあって、それが3%程度です。

ミライ:ほとんどが燃やされてるじゃないですか!

ハトリ:しかもマテリアルリサイクルに回された21%の内訳は、破砕・洗浄してプラ屑として輸出されるのが9.0%、ペレット(粒)、インゴット(塊)、フレーク(薄片)など再生製品のかたちに加工されて輸出されるのが7.5%。どちらも海外でリサイクル利用されてはいますが、純粋に国内でマテリアルリサイクルされているのは、全体の4.5%しかないんですよ。

ミライ:知らなかった…。

ハトリ:もっと言うと、その国内でマテリアルリサイクルされているプラごみは37万トンで、そのうち34.4万トンがPETボトルです。
PETボトルは88.5%がリサイクルされていて、全体の15.5%が再度PETボトルに生まれ変っています。残りは食品トレーや卵パックの材料となるシートになったり、繊維に加工されて衣服に使われたり、各種プラスチック成形品になっています。

ミライ:私にとってのリサイクルのイメージはそれでした。

ハトリ:ですよね。サーマルリサイクルって、海外ではサーマルリカバリー(熱回収)って呼ばれていて、そもそもリサイクルとはみなされていません。あれをリサイクルと呼ぶのは日本特有なんです。なにしろ世界の焼却炉の8割が集まっていると言われるくらい、日本は焼却大国なんですよ。

ミライ:日本ってもっとリサイクルが進んだ国だと思っていたのでショックです。

ハトリ:とはいえ最近は、特にプラスチックの領域ではいろいろと前向きな動きが進んでいます。
例えば、2020年7月にレジ袋が有料化されましたよね。あれは「容器包装リサイクル法(容リ法)」の改正によるもので、レジ袋の過剰な使用を抑制して、マイバッグの携行の啓発など消費者のライフスタイルの変革を促すという狙いがありました。

ミライ:私もマイバッグを待ち歩いてますよ。

ハトリ:さすがですね。実はさらに2022年4月1日に「プラスチック資源循環促進法(プラ新法)」という法律が施行されました。

ミライ:あ、ニュースで聞いたことがあります。コンビニのスプーンやフォーク、クリーニング店のハンガーなんかが問題になってました。

ハトリ:正式名称を「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」といって、 プラスチックという“素材”を対象にした法律です。

ミライ:素材が対象…はい。

ハトリ:日本では1991年4月に制定された「資源有効利用促進法」というのがあって、リデュース、リユース、リサイクルの3Rと呼ばれる資源の再生利用は進められてきましたが、これまでの規制って「個別物品」に対するものが中心だったんですね。

ミライ:個別物品、というと?

ハトリ:さっき言った容器包装リサイクル法。これはレジ袋だけでなく、びんやペットボトル、紙製やプラスチック製の容器包装などが対象です。他にはエアコンや冷蔵庫などの大型家電を対象にした家電リサイクル法と、それ以外の小型家電リサイクル法、食品廃棄物は食品リサイクル法、木材やコンクリートなどの建設リサイクル法、自動車は自動車リサイクル法があります。

ミライ:なるほど、これまではモノごとに縦割だったのが、今回はプラスチックという素材で横断的に切っているわけか。実際、「プラ新法」はどんなものが対象なんですか?

ハトリ:「プラスチック使用製品」というプラスチックが1%でも含まれている製品が対象なんです。

ミライ:1%!それは思い切りましたね!

ハトリ:もうひとつ、これまでの法律と違うのは、レジ袋が有料化を義務化されたように、これまでは「規制的」な位置づけだったのですが、今回のプラ新法は名前に「促進」と入っているように、「なるべくやってください」とか「やれるように仕組みを整えました」といった内容になっている点です。

ミライ:義務ではないんですか。

ハトリ:コンビニのカトラリーなど「ワンウェイプラスチック」と呼ばれる一度だけ使用して廃棄してしまうプラスチック製品に対しては、今回は有料化ではなく「使用の合理化」が義務なんです。合理化の方法はなんでもよくて、プラスチックの代替となる素材を使うのでもいいし、お客さんに「必要ですか」と聞くのでもいい。回収とリユース・リサイクルの仕組みを作りますでもいいんです。

ミライ:なんか曖昧ですね。

ハトリ:でも、従来の製品ごとのリサイクル法は、それに関わる事業者に回収やリサイクルの仕組みづくりの義務が課されていたのに対して、プラ新法は、プラスチックという素材が対象だから、特定の製品や業界に関係なく、あらゆる企業や団体が関係するという点では画期的なんですよ。

ミライ:ああ、言われてみるとそうですね。

ハトリ:たとえば、これまでごみの回収は廃棄物処理業の「業の許可」が必要でしたが、メーカーや小売店、サービス業者が、使用済プラスチック使用製品を自主的に回収したいといえば、大臣が認定すればやってよいことになりました。

自治体に対しても、より柔軟な資源循環の仕組みづくりを行うよう促しています。例えば、いま行われている容器包装のプラごみの分別回収ルートに、容器包装以外の使用済製品プラスチックも加えて、再商品化を進めていくとか、近隣の市区町村との連携や、市区町村と再商品事業者が連携して資源循環の仕組みを作るといったことも、これまでに比べてかなりやりやすくなったんです。

ミライ:なるほど。スプーンが有料化されるかどうかというのはごく一部の話だったんですね。

Hatori:製品の設計・製造段階ではいかに環境配慮設計にするか、製品の販売・提供段階では特にワンウェイプラスチックの使用について合理化を進める、使用済み製品の排出・回収・リサイクル段階では自治体や関連する各事業者が連携して、効率的な再商品化の仕組みを作っていくことが求められています。

こうした資源循環の輪を作ることで、新しい市場や産業も生まれます。大量生産・大量消費とは全く別の、サーキュラーエコノミー(循環型経済)という、環境(エコロジー)と経済(エコノミー)を両立させた新しい社会を作っていきたいですね。

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